今の自分を創造した人達、と言っても過言ではないかも知れません。Queen を知らなければきっと今のような感性は持っていなかったでしょうし、ましてや音楽の仕事に携わる事はなかったに違いありません。ここでは私がどのように Queen に関わり、彼らの音楽をどのように受け止めて来たのかを、駄文ながら長々と5ページに渡ってご紹介したいと思います。 小学校4年生になるのと同時に、半年間の単身赴任をしていた父を追って家族でオーストラリアのシドニーに移り住んだ私は、現地の学校に転入する事に躊躇してしまい、オーストラリア唯一であるシドニー日本人学校に8回生として通う事になりました。父の会社関係でお付き合いの深かったNさん一家との交流が深まり、N家の長男であり、日本人学校で私より1つ上の学年であるT君と自然にとても親しくお付き合いさせて頂くようになりました。 Nさん宅にお呼ばれに行くと、T君はいつも決まって洋楽を聴いていて、AC/DC、Skyhooks、Ted Mulry Gang、Elton John などなど、日本ではほとんど馴染みのないものを含めてたくさんの洋楽を私に聴かせてくれました。それまで全く洋楽というものを聴いた事がなかった私には、どれもこれもがとても新鮮に思えて、みるみるT君の世界に入り込んで行きました。 そんなT君が特に強く私に勧めてくれたレコードが3枚あります。"Queen" "Queen II" そして "Sheer Heart Attack" です。ブリティッシュ・ロック、或いはプログレッシブ・ロックと言うらしいその Queen というグループの3枚のレコードは、私の心を強く惹き付けました。今までに聴いた事のない不思議なサウンド、次を予測する事の出来ない意表をついた音楽の流れ、王室の気品さえ感じさせるハーモニー、一度聴いたら忘れられない独特のヴォーカル、全てがとても衝撃的でした。 暫くはNさん宅に行く度にT君に Queen を聴かせてもらっていましたが、6年生の夏(北半球の日本では冬)にこのグループの新しいレコードが出る事を知り、自分のお小遣いでレコードを買う事がまだ困難だった私は、T君に是非発売と同時に買って聴かせて欲しいと頼みました。 間もなく聴かせてもらった新しいレコード "A Night At The Opera" は私を完全に Queen ファンにしてしまったようです。その後間もなく、他の色々なものを我慢してようやく自分のレコード、初めての Queen のレコード "A Night At The Opera" を手にする事になります。 聴けば聴くほど味わいの出て来るこのレコードに、6年生ながら限りなく深いものが見えて来るようになって来ました。こんなにハッとするような音楽が、どうして次から次へと湧き出て来るんだろう、ここでこんなコードを鳴らす事をどうして思いつくんだろう、この夢でも見ているような幻想的な歌詞を書く人ってどんな環境で育ったんだろう、このギターの音はなんて個性的なんだろう…! そして、限りなく男性的でいて時折作り物のような美しさも見せるドラマーRoger Taylor の叩くワイルドで深みのあるドラムに瞬く間に魅せられて行き、いつしか自分もこんなドラムを叩くようになりたい、と思うようになりました。密かにドラマーを夢見て、人知れず自分の部屋で定規をスティックに布団を叩き始めたのもこの頃でした。 翌年9月、父が日本に戻る事になり、中学1年生になった私はすっかり Queen 漬けになったまま、"Sheer Heart Attack" も手に入れてT君より一足先に帰国、日本の中学校に転入してその後の生活を送る事になるのです。 |