私にとって Queen とは… その4

生 Queen

3年生の冬には "JAZZ" が発表されて、3人だけの班ノート上では更に Queen 論がヒートアップしますが、何とこの頃には2人はそれぞれ既に Queen のレコードを自分で数枚買っています。ノートには1曲ごとにかなり詳しく解説や感想を書き連ねて行っていたのですが、それに対して自分はこう思う、と2人はそれぞれ意見や感想を返して来るようになりました。

そして驚いた事に中学卒業直後、私にとっての Queen 初ライヴはこの3人で行く事になるのです。

武道館で見る初めての「生 Queen」は2階席のT列という事もあってかとても小さく見えて、これまで自分の中で存在自体があまりにも巨大だったので彼らも自分と同じ人間なんだと言う事がはっきり分かっただけでたまらなく嬉しい気持ちになりました。

自分が今、生で Queen を聴いているんだと言うあまりの感動から周りのように立ち上がって大声で歌う事も出来ず、MUSIC LIFE 誌に登場するファンの熱狂ぶりが事実だったと実感しつつ、ただただ動く彼らから飛び出して来る彼らの音楽に浸って放心状態のまま帰路に就くのでした。

3人はそれぞれ別の高校に進学してそれぞれの道を歩み始めるのですが、どう言う訳か毎日とは行かなくなったとは言え班ノートはその名前を保ったまそれぞれの家を回る事になり、Queen 論は展開され続ける事になります。

周りのあまりにも多くの同級生達やはたまた担任にまで迫害を受け続けて来た中でこうして Queen について語り合ったり一緒にライヴに行ったりする友人が出来た事で自分の中での Queen 啓蒙は完結してしまい、この後外で Queen の名前を連呼する事は殆どなくなって行きました。

日本公演もこの3人で行ったのはこの時限りでしたが、その後高校2年生の冬と大学1年生の秋と合計3回の日本公演に行く事が出来、その都度感動と放心を味わって来る幸せな Queen 歴を重ねて行きます。

疎遠

Queen のように人に何かを訴えられる音楽を、と高校まで続けて来た吹奏楽ではやはり必要に迫られて、とでも言うのか当然クラシック音楽を勉強して行く事になり、たまたまあてがわれたトロンボーンもかけがえのない物になっていたのでそのままクラシック音楽を勉強しに実家を出て東京の音楽大学へ進学します。

大学で音楽を勉強するとなると、やはりかなりの数のクラシックを聴いて色々な事を覚えて行かなければなりません。Queen のレコードを買って聴き続けていた事に変わりはないのですが、必要に迫られて聴くおびただしい数のレコードにその時間の多くを奪われて行きます。

大学2年生の終わり頃に発表された "THE WORKS" の頃から徐々に家で Queen を聴く事すらあまりなくなって来ました。大学4年生の春には4回目の生 Queen のチャンスが訪れるのですが、当時大学の行事などで忙しかった事もあって、Queen に対する想いは変わっていなかったものの「チャンスはまたある」と考えてこの時は断念してしまったのです。結局この時が Queen としての最後の来日になるとは知らずに。

その後大学を卒業すると、演奏を職業として行く事の大変さを痛感します。人並み外れた演奏能力を持っている訳でもなく、生活出来るだけの収入を演奏で得て行く事は想像以上に困難で、アルバイトをしながらほんの少しの収入でやりくりする生活が続き、今までの Queen のレコードや雑誌を実家に置いてとにかく音楽を仕事として成り立たせる事に集中せざるを得ないようになります。

この間 Queen のレコード(途中からはCDになります)が出るたびに買ってはいましたが、買った直後に数回聴いただけと言う状態がしばらく続いていました。そして卒業後5年ほど経って演奏で仕事をして行く事に少しだけ希望が見え始めて来た頃、"INNUENDO" が発表されます。

久し振りにきちんと聴いたその新作はとてつもなく素晴らしく、しばらく Queen から離れていた自分を責めたくなる気持ちでいっぱいになりました。"INNUENDO" はそれまでの試行錯誤を繰り返して来た彼らの音楽を完結させるべく作られたような仕上がりで、20年間の彼らの作品の成熟しきった部分が凝縮されて「これ以上のものはない」と言わんばかりの自信と説得力に満ちていました。

生活の目処がたって来た事も手伝ってまたしばらく Queen を聴く生活がにわかに戻って来たある日、Freddie がエイズに感染した事が発表されるのですが、その日はテレビも新聞も見ていなかったため私はそれを知りませんでした。

そして翌日1991年11月24日、あまりにも突然 Freddie の死を知る事になります。

続く…
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